食欲不振

食欲不振とは

食欲不振「食べたい」という食欲は、脳の視床下部という部分によってコントロールされています。絶食の時間が続くと血糖値が低下したり、胃が収縮して「ぐー」という音が鳴ったりしますが、脳はこれらの脂肪組織や消化管のサインを受け取り、食欲を増加させるのです。
この食欲が低下することを「食欲不振」と言います。誰しも経験したことがある症状だと思いますが、多くの場合は一時的な症状で治まります。また、食欲が湧かないとしてもそれは脳で感じていることであり、身体は変わらず食べ物から栄養を取り込まなくてはなりません。そのため、食欲不振による栄養不足は身体的にも精神的にも悪影響を及ぼします。食欲不振は何かの疾患が原因となっている可能性もありますので、注意が必要です。

食欲不振の症状

食欲不振に伴って、他の様々な症状が生じることもあります。具体的には、吐き気、下痢、胃痛、発熱といったもので、やはり胃腸などの消化器官に関わる症状が生じるケースが多いです。「早期膨満感」という、食事中にすぐ満腹になってしまうような症状もあります。また、逆に上記のような症状が食欲低下を引き起こしているという場合もあります。いずれの場合も、根本原因となっている疾患などによってあらわれる症状は異なります。
また、副交感神経をはじめとする自律神経が乱れることで食欲不振に繋がるケースもあります。副交感神経は、消化吸収を促す働きを持っています。仕事、過労、人間関係、事故、怪我などによりストレスが長期化すると、交感神経の働きが優位になりすぎてしまい、副交感神経の働きが弱くなるため食欲が湧かなくなるのです。

食欲不振の原因

食欲不振の原因は様々考えられますが、主に消化器官(食道、胃、肝臓、腸、膵臓など)の疾患であることが多いです。胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がん、肝臓がん、肝炎、炎症性腸疾患、膵炎などが挙げられます。消化器系以外の疾患で食欲不振につながるケースもあり、具体的には甲状腺疾患、慢性腎臓病、心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などが原因となります。
全身性疾患では、ウイルス・細菌・寄生虫などを原因とした感染症(風邪、急性胃腸炎、感染性胃腸炎など)や精神疾患(ストレス、うつ病など)が原因となることもあります。また、疾患治療のためのお薬の副作用が影響しているケースもあります。具体的には、痛み止め、抗がん剤、抗生剤、強心剤、向精神薬などです。
上記のような原因疾患がなくても、夏バテ、加齢、口内環境の悪化(口内炎、虫歯、義歯に関する異常など)といった要因が食欲不振を引き起こすこともあります。

食欲不振の検査方法

食欲不振の原因を特定するためには、まず問診にて患者様の状態を詳しくお伺いし、その後必要に応じて検査を実施します。

【病状についてのポイント】

  • 食欲が湧かなくなった時期
  • 食欲不振が続いている期間
  • 体重の変化
  • 気分の落ち込みや不安などがないか
  • 発熱や痛みなど、食欲不振に伴う症状がないか
  • 味覚障害が発生していないか など

【環境についてのポイント】

  • 心身のストレス
  • 日常生活における変化
  • 治療中の疾患や飲んでいるお薬
  • 服用中のサプリメント
  • 周囲に似たような症状が出た人がいるか
  • 生理周期、妊娠の可能性 など

以上のようなポイントを問診でお聞きした上で、必要に応じて尿検査や血液検査を実施します。疾患の可能性を探るためのスクリーニング検査として実施されることもあれば、原因疾患をある程度推測して検査を実施することもあります。
また、消化器系の疾患が疑われる場合は下記のような検査を実施することもあります。

  • 胃カメラ
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
  • 腹部レントゲン検査
  • 腹部エコー検査
  • 画像診断(MRI検査、CT検査など) など

また、必要に応じて下記の検査を実施することもあります。

  • 心電図検査
  • 胸部レントゲン検査 など

食欲不振の治療方法

食欲不振には様々な原因が考えられるため、まずは原因を特定しそれに対するアプローチが必要となります。例えば急性胃腸炎を原因としている場合、お薬の服用を中心として症状を緩和させる治療を行います。他にも、各症状に合わせて以下のようなお薬を用います。

  • 下痢の症状がある場合…整腸剤
  • 吐き気・嘔吐の症状がある場合…制吐剤
  • 栄養の不足や脱水症状が見られる場合…点滴による補液

吐血や貧血の症状がある場合、胃カメラ検査による消化管の状態の確認と、必要に応じて止血処理などを実施します。
さらに、胃酸により胃や十二指腸の粘膜がダメージを受け、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症している場合、まずは合併症の有無を確認します。合併症には出血や穿孔などがあり、それらが確認できた場合にはそれに対する処置が必要となります。

また、胃にヘリコバクター・ピロリ菌の生息が発覚した場合、除菌治療が実施されます。「アスピリン」や「非ステロイド性抗炎症薬」といったお薬は潰瘍発生の原因となりますので、これらを用いた薬物療法は中止となる可能性があります。

ピロリ菌について

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療には以下のようなお薬が使われます。

  • 粘膜を保護するお薬
  • 胃酸の分泌量を少なくするお薬

また、適切な生活習慣や食事は食欲を回復させることに繋がりますので、以下のような毎日の習慣を見直すようにしましょう。

  • 早寝早起き、1日3食の規則正しい食事などで自律神経を正常に保つ
  • 運動習慣をつける
  • 自分に合ったストレス解消法を見つける
  • お酒の飲み過ぎに注意し、肝臓に負担をかけすぎない など
keyboard_arrow_up